・重症熱性血小板減少症候群(SFTS, Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)は、マダニにより媒介されるSFTSウイルスによる感染症です。日本国内では2013年1月に初めて患者が報告され、2021年以降は毎年100名を超える感染者が確認されています。特に本年は5月以降の感染者数が例年よりも増加しています 。
・ 我々の研究成果によると、SFTSの感染者数は季節変動が認められ、5~7月にピークを示した後に減少に転じる傾向があります(Roger’s test, p<0.001)。また、過去の年には10月下旬に一過性の小幅な増加が観察されることがありました。しかし、本年は様相が異なり、5月~8月には例年より多い感染者数を記録し、10月末時点でも全国で週4~5例の報告が続いていました。2025年11月9日現在では、報告者数は減少傾向にありますが、引き続き野外活動時の防虫対策や早期受診の徹底など、感染予防への意識を高めることが重要です 。
・SFTSウイルスを媒介するマダニに刺されないように、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖・長ズボン、防止、手袋を着用し、首にタオルを巻く等、肌の露出を少なくする、マダニ用の虫よけ剤を使用する、また、屋外活動後は入浴し、マダニにさされていないかを確認しましよう。
2025年11月24日修正更新
データ・情報ー厚生労働省・国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
厚生労働省 人口動態統計 総務省 人口推計
研究ー名古屋市立大学研究チーム EID Research Resource Library
・直近4週間におけるSFTS報告数は、42週(10月13日から10月19日)には静岡で2人、兵庫で1人、宮崎で1人の計4人でした。43週(10月20日から10月26日)は、静岡1人、三重1人、兵庫1人、佐賀1人、長崎1人と5人でした。44週(10月27日から11月2日)は静岡1人、京都1人、香川1人、宮崎1人でした。今週45週(11月3日から11月9日)は岡山1人でした 。
・週ごとの疾患集積性の空間解析では、42週(10月13日から10月19日、p=0.286)、43週(10月20日から10月26日、p=0.243)、44週(10月27日から11月2日、p=0.169)、45週(11月3日から11月9日、p=0.262)は、いずれも集積地域は同定されませんでした 。

※感染者の集積地域とは、感染者数(推定値)・人口・周辺地域の感染状況等から、統計的に他の地域よりも感染者が集積している地域のことを指します。解析では、相対リスクと共に集積地域を算出し、地図上に示しています。地図上の「赤色」は、最も集積性を示した地域(第1集積地域/高リスク地域)として同定された地域であり、「ピンク色」は、第1集積地域として同定されましたが、他の地域と比べて統計的に有意でない地域を示しています。

・SFTSは2025年5月以降、例年を上回る急増を示し、第45週(11月9日現在)までにすでに184名の患者が報告されています(うち死亡9名、致死率4.9%) 。
・地理的には、西日本を中心に九州・四国・中国・関西で多く確認されていますが、近年は愛知・静岡・神奈川、さらには北海道へと徐々に分布が東へ拡大しています。
・2021年から2025年まで、年ごとに患者発生状況を解析すると、感染者が集積している地域は、九州と四国の全地域、および中国地方の一部です。。
・SFTSの発生には季節変動があり、例年5~7月に増加し、さらに10月にも再び上昇傾向が認められます(Roger’s test, p<0.001)。



