新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、私達の日常生活、働き方、友人等とのコミュニケーションの取り方等々を大きく変化させ、個人や集団の行動変容を促すことが感染防御の大きな位置を占めた。一方、感染患者や死亡者数は国や地域で大きく異なり、社会の格差が健康に与える影響を改めて浮き彫りにした。この中ベトナムでは、COVID-19 の感染患者数は世界的に少なく、死亡者はいない(2020/7/1、WHO)。その詳細な理由の解明は、ベトナムにとっても、世界中の国々にとっても、そして今後の COVID-19 の第2波への脅威、将来の未知のウイルス等による感染症(新興感染症)の発生やそのパンデミックに備える為にも必須である。本研究活動では、ベトナムの地域住民や医療従事者、COVID-19 の患者調査や日本-ベトナムの交流等を通して、COVID-19 や将来の新興感染症の感染防御の為に必要な対策と新興感染症に頑強なコミュニティー作りを共に学び考える。
本研究活動は、
1)日本とベトナム両者のCOVID-19の感染者の報告データ等を使用
①時間的・地理的拡大状況の統計的な解析と可視化をおこなう
②アンケート・インタビュー調査・ワークショップ等により、COVID-19の知識や情報、考え方、行動を把握・整理をおこなう
③医療機関ではCOVID-19患者の入院に至った要因をまとめる。
これらによりCOVID-19の感染拡大や重症化・行動変容への影響因子を疫学・文化人類学・社会経済学・医学等様々な学問分野から検討し、科学的エビデンスとしてまとめるという特徴を持つ。
2)これを基盤とし、ベトナムの地域ヘルスセンター(CHC)の協力の下、高齢者や農村部の住民にもCHCでは閲覧可能スマートフォン向けアプリやコミュニティーの中での人的ネットワークというIoTとアナログの両者での感染症情報の伝達の在り方と将来展開を検討し、COVID-19の第2波や将来の新型ウイルス等による感染症に頑強なコミュニティー作りを目指す。
短期的・中期的には、前述の活動 1)で得られた成果を科学的・学術的にまとめ国際的に学術論文や国際学会にて発表する。特にベトナムにおけるCOVID-19の感染者数の少なさ・死亡者ゼロの要因は、世界的にも注目されており、SARSや鳥インフルンエンザH5N1の経験がどのように生かされているか、という事は、今後の感染管理への世界的な政策や医療提供方法への提言となる。
長期的には、CHCスタッフと共に、各コミュニティーの住民向けの教育プログラムを実施し、新型ウイルス等による感染症に頑強なコミュニティー作りに貢献する。日本ではシンポジウムの開催と本プログラムのウェブサイトの公開により、ベトナムのCOVID-19の感染対策モデルを広く紹介し、日本のCOVID-19の感染拡大阻止と、将来の新型ウイルス等による感染症(新興感染症)に頑強な地域医療の在り方への提言とする。
ベトナムにおけるCOVID-19感染者・死亡者の発生地域と疾病集積性の検討
【概要】
ベトナムのCOVID-19の空間的・時間的疾病集積性を明らかにし、経時的な政策、イベントとの関連を検討した。
COVID-19に関する地域住民及び医療従事者の知識・態度・行動調査(KAP: Knowledge, Attitude, and Practice)調査
【概要】
COVID-19について、医療従事者として必要な情報、地域住民が行動変容の為の必要な情報が届いていたか、それを正しく理解し行動に結びつけていたかを明らかにする。日本のそれと比較し、ベトナムの感染者数(死亡者数)の少ない要因を検討した。
ベトナムにおけるCOVID-19患者の臨床的特徴と、重症化要因の調査研究
【概要】
ベトナムではデルタ株発生を受けて、感染患者・死亡者が急増した。特にホーチミン市では感染患者が爆発し、医療崩壊が起きた。
事態を慎重に受け止めた国の依頼を受け、国立バクマイ病院(ハノイ市)では、医師、看護師らスタッフ2000名をホーチミン市に送り、重症患者を専門に診療するICUセンターを緊急に設営した。
本日越共同研究チームでは、本ICUセンターでの重症患者の臨床データを収集し、デルタ株による感染の特徴と重症化阻止の為の重症化要因解明の為の臨床研究を開始した。
結果として、BMH・緊急ICUセンターが設営されていた8月末から9月末までの1ヵ月間の入院患者504名(内、死亡者263名、致死率52.2%)の臨床情報を後ろ向きに収集することが出来た。
読売新聞に調査研究が取り上げられました
読売新聞に調査研究が取り上げられました。
コロナ感染リスクは「西高東低」、名古屋市立大など「地図」作成…年末年始の注意呼びかけ(読売新聞オンライン)